図面、画面キャプチャ、PDFを何度も見せながらAIと作業していると、会話は見た目以上に重くなります。文章は短くても、画像が何枚も残っているからです。長時間セッションが急に鈍る、古い画像を前提に話し始める、圧縮後に必要な情報が抜ける。こうした症状を「AIの調子」で片づけると、運用は安定しません。
OpenAIは2026年8月24日、Codex 0.149.1を公開しました。リリースページ自体は短く、0.149.0からの変更一覧へのリンクだけです。その比較履歴には、リモート圧縮で保持する画像にも予算を割り当てる変更が含まれています。画像の多い履歴が、想定したコンテキスト予算を超えて残る問題への対処です。
地味な修正ですが、図面確認、EC商品登録、Web制作、請求書照合のように画像を多用する業務には直接関係します。AIへ画像を渡す設計では、「何枚送れるか」より「何を残し、何を捨てるか」を先に決めたほうがいい。今回の更新は、その理由を実装側から見せています。
0.149.1で確認できる変更
公式の比較履歴では、0.149.0から0.149.1までに5件のコミットが記録されています。記事の中心は、そのうちの「Budget retained images during remote compaction」です。
変更前のリモート圧縮では、保持するメッセージの予算に文章は数えられていましたが、画像は数えられていませんでした。そのため、画像が多い履歴ほど、予算が示す量より多くのコンテキストを残す可能性がありました。0.149.1では、既存の画像サイズ推定を使って保持画像にもコストを割り当てる機能が追加されています。
画像と、その直前・直後にある説明ラベルを一まとまりとして扱う点も重要です。圧縮の境界で画像だけ残り、「これは施工前」「こちらが修正後」といった説明だけ落ちると、AIは画像の意味を取り違えます。公式の変更説明では、境界メッセージを切り詰める際に画像と隣接ラベルを分離しないこと、境界にある画像が予算へ収まらない場合は、さらに古いメッセージを埋め戻さないことが記されています。
ただし、この画像予算は compaction_image_budget というオプトイン機能です。0.149.1へ更新しただけで、すべての環境の圧縮動作が同じように変わるとは限りません。導入判断では、バージョンだけでなく機能の有効状態も確認する必要があります。
文章だけの業務と、画像を使う業務は分けて考える
文章中心の問い合わせ対応と、画像中心の図面確認を同じ設定で回すと無理が出ます。前者は会話の要約を残せば続けやすい。一方、後者では「どの画像についての判断か」が失われると、文章だけ残っても再開できません。
たとえば、電気設備の図面から材料を拾う作業を考えます。平面図、拡大図、凡例、変更指示を順に渡し、途中で品番や数量を確認する。セッションが長くなるほど、初期に渡した凡例や修正前の図面が圧縮対象へ近づきます。古い画像を残しすぎればコンテキストを圧迫し、落としすぎれば判断根拠が消えます。
ECの商品登録も同じです。商品正面、裏面、成分表示、注意書き、バリエーション画像を連続で読み取らせると、画像と説明の対応関係が品質を左右します。「3枚目が旧パッケージ」という一文が落ち、画像だけ残れば、古い情報を商品説明へ混ぜる事故につながります。
ここで必要なのは、セッションを無限に延ばす工夫ではありません。画像を含む業務を、途中で安全に区切れる単位へ変えることです。
中小企業で先に決める4つのルール
1. 画像に業務上の名前を付ける
「画像1」「さっきの写真」では、圧縮後の復元に耐えません。「A棟2階_照明平面図_20260825」「商品SKU123_成分表示_現行版」のように、案件、対象、版が分かる名前を付けます。AIへ渡す説明にも同じ識別子を入れておけば、画像が落ちても正本へ戻れます。
2. 判断結果を会話の外へ残す
チャット履歴は作業場所であり、正本の保存先ではありません。確定した数量、採用した図面版、未確認事項、次の担当を案件台帳へ移します。圧縮が正しく動いても、会話の全情報を永久保存する仕組みにはなりません。
保存するのはAIの長い説明ではなく、人が再開に使う情報です。対象ファイル、確定事項、保留、根拠、次の操作。この5項目が揃えば、別のセッションや別の担当者へ渡しやすくなります。
3. 新旧画像を同じ束に入れない
修正前と修正後、旧商品と現行商品を同じ会話へ足し続けると、AIが参照すべき版を間違えます。比較が終わった時点で採用版を明記し、旧版は参照対象から外す。履歴圧縮へ任せる前に、人間側で版管理を済ませます。
4. セッションの終了条件を決める
「まだ会話できるから続ける」では、問題が出るまで止まりません。図面10枚、商品20SKU、または1工程の完了を区切りにして、結果を正本へ保存し、新しいセッションへ移る。上限は業務ごとに試し、精度低下や再説明の回数を記録して調整します。
更新すれば解決する、ではない
0.149.1の変更は、画像を含む圧縮予算の計算を現実に近づけます。それでも、間違った版を渡した、画像名が曖昧だった、確定事項をチャットにしか残していなかった、といった運用上の欠陥は直りません。
もう一つの注意点は、画像サイズの推定が画像の業務的重要度までは判断しないことです。容量の小さい凡例が、容量の大きい現場写真より重要な場合もあります。どの画像を残すべきかは、ファイルサイズだけで決まりません。重要な根拠は正本側で固定し、必要なときに再投入できるようにしておくべきです。
今回の変更には、画像予算のほか、新規・分岐スレッドの発生元を分類する --thread-source、切り離されたメモリ処理を memory_consolidation と識別する修正も含まれています。これらは監査や利用分析に使える材料ですが、既存スレッドの発生元を後から上書きする機能ではありません。公式説明でも、新規作成時に適用され、再開した既存スレッドのsourceは上書きしないとされています。
最初に試すなら、画像の多い1業務だけ
全社一斉に設定を変える必要はありません。まず、画像を多く使い、長時間化しやすい業務を一つ選びます。候補は図面確認、商品登録、Webページ修正、帳票照合です。
試行前に、1セッションあたりの画像枚数、再説明が発生した回数、誤った版を参照した回数、正本へ保存するまでの時間を記録します。0.149.1への更新と機能状態の確認後、同じ種類の案件で比較する。改善を「何となく軽くなった」で終わらせず、再説明と版違いが減ったかで見ます。
私なら、コンテキストを大きくする前に業務を小さく区切ります。容量を増やすと、曖昧な画像や古い判断まで長く残るからです。AIへ渡す画像が増えた会社ほど、必要なのは巨大な会話ではなく、途中で切っても再開できる仕事の形です。
一次情報
- OpenAI Codex 0.149.1 Release
- OpenAI Codex 0.149.0…0.149.1 比較履歴
- PR #40280: Budget retained images during remote compaction
- PR #40161: Allow exec callers to classify new threads
公開日:2026年8月25日。機能名と挙動はOpenAI公式のリリース、比較履歴、PRを確認しています。オプトイン機能は環境によって有効状態が異なるため、導入前に実機で確認してください。

