AIに仕事を任せても、再起動のたびに「どこまで終わった?」を人が調べているなら、まだ自動化は完成していません。止まらないことより、止まった後に正しく続きを始められることの方が、夜間処理では効きます。
OpenClaw 2026.9.6は、再起動後の未完了作業の回復、過去30日分のUsage表示、会話を中断せず別タスクを始める操作を追加しました。派手な機能より、日々の運用で困る「続き」「費用」「割り込み」を扱った更新です。
公式情報で確認できる変更
公式リリースノートは、2026.9.6の柱として「再起動後の未完了作業の回復」と「完全な30日間のUsageレポート」を挙げています。Web UIでは、コマンドパレットから独立した作業を新しいセッションとして開始でき、現在の会話と入力途中の文面はそのまま残ります。
同じ更新には、会話のアーカイブと復元、検索範囲の拡張、リモートワークスペースでのFiles・Memory・Skillsも含まれます。変更量は大きいものの、中小企業の運用で先に見るべきなのは機能数ではありません。止まった仕事を見失わないか、利用量を月単位で説明できるか、この二点です。
「再開できる」と「安全に再開できる」は違う
再起動後に未完了作業が戻るのは便利です。ただし、処理が再開された事実だけでは安全確認になりません。外部送信、請求処理、在庫更新、ファイル削除のような操作は、停止直前にどこまで実行されたかで扱いが変わります。
たとえばメール送信後、完了記録を書く前に停止した場合。単純に同じ工程から再開すると二重送信が起きます。請求書発行や顧客通知でも同じです。回復機能を使う前に、各工程を「何度実行しても結果が変わらない処理」と「一度だけ実行すべき処理」に分ける必要があります。
再開の判断材料として最低限残したいのは、作業ID、開始時刻、最後に完了した工程、外部システムの受付番号、次に実行する工程です。AIの会話履歴だけに置かず、台帳や実行ログを正本の保存先にします。
30日分のUsageで見るべき数字
利用量の画面を開いても、「今月いくら使ったか」だけでは改善につながりません。仕事の単位へ戻して見ます。
- 完了した業務1件あたりの利用量
- 人が差し戻した回数と、その前後で増えた利用量
- 夜間処理の成功件数、再開件数、重複実行件数
- モデル別ではなく、顧客対応、調査、開発など業務別の比率
30日分を見られると、週末だけ急増する処理や、毎回長いやり直しが起きる案件を見つけやすくなります。ただし、公式ノートが示すのはUsage表示の改善です。会社の原価計算や請求区分まで自動で完成するとは書かれていません。顧客別採算を見るなら、セッション名や作業IDを案件台帳と結びつける設計が別途必要です。
会話を止めずに別タスクを始める
Web UIのコマンドパレットでは、テキストや貼り付けた画像から独立タスクを開始できます。現在の会話や入力中の下書きを残したまま、新しいセッションへ仕事を分けられます。
これは「何でも並列にする」機能ではありません。元の仕事と入力・成果物が独立している場合に効きます。競合調査と記事校正は分けやすい。一方、同じ顧客台帳を二つのタスクが更新するなら、同時実行より書き込み順序の管理が先です。
メンションも権限付与ではありません。公式ノートは、名前を入力しただけでは相手が選択されず、メンションしても会話共有やアクセス許可にはならないと明記しています。担当者を呼ぶ操作と、データを見せる権限は分けて確認します。
更新前に決める三つの境界
- 再開境界: 読み取りや下書きは自動再開。送信、請求、公開、削除は受付状態を照合してから再開します。
- 並列境界: 同じ正本を書き換える仕事は同時に走らせません。調査や画像確認など、出力先が分かれる仕事から並列化します。
- 費用境界: 30日Usageを業務IDへ結びつけ、1件あたりの上限を超えたら原因を確認します。安いモデルへ一律変更する前に、差し戻しと再実行を減らします。
20分でできる受け入れ確認
- 検証用の独立タスクを開始し、現在の会話と入力途中の文面が残るか確認する。
- 外部送信を伴わない長めの処理を動かし、途中で安全に再起動して未完了作業の表示と再開位置を見る。
- 同じ処理が二重に走っていないか、作業IDと成果物で照合する。
- Usage画面で過去30日の範囲が表示され、対象セッションを追えるか確認する。
- アーカイブした検証会話を復元し、成果物と履歴が揃っているか見る。
本番で試す必要はありません。顧客送信も削除もない検証業務で、停止、再開、照合まで一度通します。
限定GOとHOLD
限定GO: 読み取り、調査、下書き、テストなど、重複しても外部へ影響しない仕事。作業IDと完了記録を残し、再起動後の再開位置を確認してから対象を広げます。
HOLD: 決済、請求、メール送信、公開、削除、同じ台帳への並列書き込み。外部側の受付状態を照合する仕組みと、一度だけ実行するための識別子がない状態では、自動再開を許可しません。
今回の更新で注目すべきなのは、AIが多く働けるようになったことではありません。途中で止まっても、仕事の状態を人とAIが同じ記録から確認できるようになったことです。回復機能を入れるなら、最初の一手は自動再開のONではなく、作業IDと完了地点を残すことです。

