経営者はSNSで発信すべき、とよく言われます。個人ブランディング、採用ブランディング、見込み客との接点づくり。SNS発信のメリットは十分に理解しています。理解した上で、自分は苦手です。
この記事では、SNSが苦手な経営者である自分が、どうやってその苦手と折り合いをつけているかを書きます。同じように「発信しなきゃと思っているけど、できない」と感じている人の参考になればと思います。
何が苦手なのか
自分のことを発信するのが恥ずかしい。突き詰めると、これに尽きます。
「今日こんなことがありました」「こんな成果が出ました」「こんなプロジェクトを手がけています」。書こうとすると、自慢しているように感じてしまいます。「こんなことを書いて、誰が読みたいんだろう」とも思います。かといって、当たり障りのないことを書いても反応はないし、書く意味もわからない。この葛藤が、投稿ボタンを押す手を止めます。
Twitter(現X)は3回挫折しました。Instagramも2回。毎回「今度こそ続ける」と意気込んで始めるのですが、パターンはいつも同じです。最初の1週間は毎日投稿する。2週目はネタが減って2日に1回になる。3週目は「今日は何も書くことがない」と思って投稿しない日が増える。1ヶ月後にはアプリを開くことすらなくなる。このサイクルを5回繰り返しました。
SNSが続かない構造的な理由
振り返ると、自分の性格だけの問題ではなく、構造的な理由もあると思っています。
1つ目は、SNSが求める「短くてキャッチーな発信」が自分に合わないこと。考えをまとめるのに時間がかかるタイプなので、頭の中の考えを140文字(X)や数行のテキストに凝縮するのが難しいです。書いては消し、書いては消しを繰り返すうちに30分経って、「こんなに時間をかけるほどのことか?」と面倒になります。
2つ目は、反応が可視化されること。いいねの数、リポストの数、フォロワーの増減。リアルタイムで見えてしまいます。頭では「気にするな」とわかっていても、数字が見えると気になるのが人間です。投稿して3時間経ってもいいねが2件だと、「自分の発信は求められていないのかも」と思ってしまう。この精神的な消耗が、継続を阻む大きな要因でした。
3つ目は、タイムラインの速さ。SNSは流れていくメディアです。1つの投稿の寿命が短くて、30分かけて考えた内容が数時間で他の投稿に埋もれてしまいます。この「流れていく感」がもったいなく感じました。蓄積されない発信に時間を使うのは効率が悪いのでは、と。
4つ目は、頻度のプレッシャー。SNSは継続的な投稿が前提のメディアです。週に1回では存在感が薄れますし、毎日投稿するのが理想とされます。でも毎日発信するネタがありません。ネタを捻り出そうとすると、無理に面白いことを言おうとしてかえって不自然になります。
ブログに落ち着いた理由
このブログを始めたのは、SNSよりもブログの方が自分に合っていると思ったからです。実際にやってみて、その直感は正しかったです。
ブログは長く書けます。140文字に収める必要がないので、自分のペースで考えを整理しながら書けます。「短くてキャッチーに」というプレッシャーがないだけで、書くハードルがだいぶ下がりました。
検索から読まれます。SNSのようにフォロワー数に依存しません。記事を書いておけば、同じ悩みを持った人がGoogleで検索してたどり着いてくれます。タイムラインで流れてしまうこともなく、半年前に書いた記事が今日も読まれます。この「蓄積される」感覚は、ブログならではの強みです。
数字が目に入りにくいのも助かっています。いいねの数やリツイート数のような即時的なフィードバックがないので、心理的な負荷が少ないです。PV数はGoogle Analyticsで確認できますが、SNSほどリアルタイムに目に入りません。「反応が気になって書けない」という問題が起きにくい構造です。
頻度のプレッシャーもありません。ブログは週1回でも月1回でも成立します。検索経由で読まれるので、投稿頻度が下がってもアクセスがゼロにはなりません。この「マイペースで続けられる」点が、SNSとの一番大きな違いだと感じています。
ブログを続けるための仕組み
とはいえ、ブログも仕組みがないと続きません。「よし、今日も書こう」というモチベーションに頼ると、必ず途切れます。仕組みで回す必要があります。
自分がやっているのは、まず「書くネタをストックする仕組み」を作ること。日常の仕事の中で「これは他の人にも役立つかも」と思ったことを、すぐにメモします。ObsidianのInboxフォルダに一行だけ書いておきます。「楽天RMSのCSVアップロードで困った」「AIに見積書作らせたら意外といけた」。こういう一行メモが、記事のタネになります。
書くときは、このストックから選ぶだけ。「今日は何について書こう」と考える時間がゼロになります。ネタを「考える」フェーズと「書く」フェーズを分離するのがポイントで、同時にやろうとすると、どちらも中途半端になります。
文字数は気にしていません。短くてもいいと割り切っています。500文字でもいい。自分のブログなのだから、ルールは自分で決められます。「毎日書く」「1記事2000文字以上」のようなルールを設けると、それがプレッシャーになって続かなくなります。過去にこのパターンで何度も挫折しました。
完璧も求めません。書いて公開する。それだけです。後から修正してもいい。公開してから「ここ直したいな」と思ったら直します。完璧な下書きが10本たまっているよりも、70点でも公開された1本の方が、読者にとっては価値があります。自分にとっても、「公開した」という事実がモチベーションになっています。
SNS発信は経営者の義務ではない
「経営者はSNSで発信すべき」という意見は理解します。実際にXやInstagramで見込み客をつかんでいる経営者はたくさんいますし、SNSからの問い合わせで売上を伸ばしている人も知っています。SNSが得意な人にとっては、非常に効率的なチャネルです。
でも、全員がSNSで発信する必要はないと思っています。苦手なことを無理にやるより、得意なことに時間を使った方が成果は出ます。自分の場合、ブログとクチコミと紹介で仕事が回っています。SNSをやっていなくても、事業は成り立っています。
「発信しなきゃ」という焦りで無理にSNSを始めて、続かなくて自己嫌悪に陥る。このパターンが一番もったいないです。発信の手段はSNSだけではありません。ブログ、ポッドキャスト、メルマガ、YouTube。自分に合った手段を選べばいいと思います。
もし同じように「SNSが苦手だけど発信しなきゃ」と思っている人がいたら、ブログも選択肢に入れてみてください。自分のペースで、自分の言葉で、自分の長さで書ける場所を持つ。それだけでも十分な発信になります。
ブログとSNSの使い分け
完全にSNSを捨てたわけではありません。ブログの新記事を書いたとき、その告知だけXに投稿することがあります。ブログが「コンテンツの本体」で、SNSは「告知の場」。この役割分担にしてから、SNSに対するストレスがかなり減りました。
SNSで「何を書こう」と悩む必要がなくなりました。ブログを書いて、そのリンクと一言を添えるだけ。「ブログ書きました。楽天RMSとの付き合い方について」。これなら30秒で投稿できます。内容はブログの方で充実させているから、SNS側は最小限で十分です。
もう一つ、Facebookのグループには参加しています。EC事業者のコミュニティや、地域の経営者コミュニティです。ここでは自分から発信するというより、他の人の投稿にコメントしたり、質問に答えたりすることが多いです。この方が自分には向いています。自分のことを語るのは苦手でも、他の人の質問に答えるのは楽しいし、自然体でいられます。
発信の目的を再定義する
そもそも、なぜ発信するのか。この問いに対する自分の答えは明確です。「同じ悩みを持っている人の役に立つため」。自慢のためでも、フォロワーを増やすためでもありません。
この目的が定まってから、書くことが楽になりました。自分が仕事で困ったこと、解決したこと、失敗したこと。それを正直に書きます。読む人が「自分だけじゃないんだ」とか「こういうやり方もあるのか」と思ってくれたら、それで十分です。
承認欲求を満たすためではなく、過去の自分と同じ悩みを持つ人への手紙として書く。その意識を持つようにしてから、書くことへの抵抗感がだいぶ薄れました。
数字で見るブログの効果
ブログを始めて1年以上が経ちました。具体的な数字を書いておきます。公開した記事数は約80本。月間PVは約3,000〜5,000。ブログ経由の問い合わせは月に1〜2件です。
数字だけ見ると、大したことないと思うかもしれません。でも、月に1〜2件の問い合わせが、ブログの記事を読んだ上で来てくれています。つまり、自分の考え方や仕事のスタイルをある程度理解した人から連絡が来ます。これはSNSのDMとは質が違います。
ブログはすぐに結果が出るメディアではありません。最初の3ヶ月はPVがほぼゼロでした。でも記事が増えて検索にヒットするようになると、じわじわとアクセスが伸びます。この「じわじわ」が、自分のペースに合っています。急がなくていい。焦らなくていい。書き続けていれば、読んでくれる人は自然と増えていきます。
発信が苦手でも、仕事はできます。SNSのフォロワー数と事業の成果は、必ずしも比例しません。自分の経験がそれを示しています。大事なのは、自分に合ったやり方を見つけて、続けること。それがブログであれ、ポッドキャストであれ、人前で話すことであれ。無理なく続けられる方法が、結果的に一番大きな成果を生むと感じています。
