この記事は2025年7月に公開し、最新の情報をもとに随時更新しています。(最終更新:2026年3月)
「副業でEC(ネットショップ)を始めたい」という相談を受けることがあります。EC支援の仕事をしている立場から、始める前に知っておいてほしいことを書きます。
ネガティブなことも書きますが、止めたいわけではありません。現実を知った上で始めたほうが、結果的にうまくいくからです。情報商材のキラキラした話よりも、実務の泥臭い話をします。
甘い話が多すぎます
「月5万円の副収入」「在宅でできる」「AIで自動化」「仕入れ不要のドロップシッピング」。こういうキャッチコピーの情報商材が溢れています。SNSの広告、YouTube、note。どこを見ても「簡単に稼げる」という話ばかりです。
現実は、EC運営は地味で手間がかかる仕事です。商品の仕入れ、撮影、ページ作成、在庫管理、発送、問い合わせ対応。これを副業の空き時間でやるのは、正直かなりハードです。自分はEC支援の仕事で何十というショップを見てきましたが、「簡単に稼げた」という人は見たことがありません。
10年間存続できるネットショップはわずか5%程度と推定されています。これは副業に限らず、EC全体の数字です。副業の場合、使える時間がさらに限られるので、難易度は上がります。5%という数字を知った上で始める覚悟があるかどうか。これが最初の分かれ道です。
最初の壁:「何を売るか」
EC運営で一番大事なのは商品選びです。「何を売るか」で勝負の8割が決まる、と自分は思っています。
よくある失敗は「売れそうなもの」を選ぶことです。売れそうなものは、すでに多くの競合が売っています。Amazonや楽天で検索して、似たような商品が山ほど出てくるなら、そこに後発で参入しても埋もれるだけです。価格競争に巻き込まれて、利益がほとんど出ません。
もう1つの失敗は「自分が好きなもの」を売ることです。好きなものと売れるものは違います。自分が好きでも、需要がなければ売れません。「こだわりの商品」を作っても、そのこだわりに共感してお金を払ってくれる人がいなければビジネスになりません。
自分がクライアントにアドバイスしているのは「自分が詳しいジャンル」で「需要があるもの」を選ぶことです。詳しいジャンルなら、商品の目利きができます。仕入れ先の良し悪しがわかります。お客さんの気持ちがわかります。これが競合との差になります。
プラットフォームの選び方
2026年現在、ECを始めるプラットフォームは大きく3つあります。それぞれ特徴が違います。
1. モール型(Amazon、楽天、Yahoo!ショッピング)
集客力がある代わりに、手数料が高いです。Amazonなら販売手数料が8〜15%。楽天は月額固定費+販売手数料で、トータル15〜20%くらいかかることもあります。
メリットは「お客さんがすでにいる」ことです。自分で集客しなくても、モール内の検索で見つけてもらえる可能性があります。副業で始めるなら、まずモールからというのは合理的な選択です。集客にかける時間と労力を、商品の品質や顧客対応に振り向けられます。
デメリットは「価格競争に巻き込まれやすい」ことです。同じ商品を売っている出品者が何十人もいると、一番安い店が選ばれます。利益率が薄くなりがちです。
2. 自社サイト型(Shopify、BASE、STORES、カラーミーショップ)
手数料は低いですが、集客は自分でやる必要があります。SNSやブログ、広告で自分のサイトにお客さんを連れてきます。BASEやSTORESは初期費用ゼロで始められるのが魅力です。
副業で自社サイトの集客まで手が回るかは正直疑問です。SEOで上位表示されるまで半年以上かかりますし、SNS運用も毎日の作業が必要です。ただし、ブランドを作りたい場合や、リピーターを大事にしたい場合は自社サイトが向いています。モールと自社サイトの併用もありです。
3. フリマ・ハンドメイド系(メルカリShops、minne、Creema)
手軽に始められるのが最大のメリットです。スマホ1つで出品できます。ハンドメイド作品やヴィンテージ品を売るなら、ここが最適です。初期費用もほぼゼロです。
副業の最初のステップとしてはおすすめです。ただし、本格的にスケールさせるには限界があります。月商50万円以上を目指すなら、モールか自社サイトに移行する必要があります。
副業ECの現実的なコスト
「無料で始められる」は嘘ではありませんが、実質的にはお金がかかります。隠れコストを把握しておかないと、あとで「こんなはずでは」となります。
商品仕入れ:最低でも3〜5万円。在庫を持つなら10万円以上。売れ残りリスクもあります。梱包資材:月2,000〜5,000円。段ボール、プチプチ、テープ、ラベル。地味にかかります。撮影機材:スマホでも可能ですが、ライトや背景があると見栄えが変わります。1万円程度で十分な機材が揃います。広告費:月1〜3万円あると集客が楽になりますが、最初は不要です。
合計すると、初期投資で5〜15万円、ランニングコストで月3〜5万円。これを副業の利益で回収するには、ある程度の期間が必要です。最初の3ヶ月は赤字を覚悟しておいたほうがいいです。
時間の使い方が鍵です
副業ECで一番の課題は時間です。本業が終わった後、家事や育児の合間にEC業務をやります。
商品登録、受注処理、発送準備、問い合わせ対応、SNS投稿、在庫管理。全部やると、1日2〜3時間は使います。週末は撮影やまとめ作業でさらに時間が必要です。「空いた時間にちょっとやる」レベルではありません。
自分がおすすめしているのは「やらないことを決める」ことです。発送はヤマトや佐川の集荷を使います。自分で持ち込みません。問い合わせはテンプレートで対応します。毎回ゼロから書きません。撮影は週末にまとめて行います。毎日1個ずつ撮影しません。ルーティン化できる作業はルーティン化します。
2026年はAIツールで効率化できる部分も増えています。商品説明文の作成、SEO対策の文章、問い合わせの返信下書き。ただし、AIに任せられるのは文章系の作業で、商品の撮影や梱包・発送は人間がやるしかありません。ここが一番時間を使います。
確定申告のこと
副業のEC収入が年間20万円を超えると、確定申告が必要です。これを知らずに始める人が多いです。「知らなかった」は通用しません。
注意点として、住民税の徴収方法を「自分で納付」に選択しないと、副業の収入が本業の会社にバレる可能性があります。住民税は前年の所得に基づいて計算されるため、本業の給与所得だけでは説明できない増額があると、経理担当者に気づかれます。会社の副業規定を確認してから始めてください。
また、ECの経費(仕入れ、梱包材、通信費、広告費、サーバー費用)は確定申告で控除できます。レシートや領収書は必ず保管しておきましょう。クラウド会計ソフト(freeeやマネーフォワード)を使えば、経理作業は大幅に楽になります。
特定商取引法に基づく表記も忘れずに。ネットショップを運営する場合、事業者名、住所、連絡先などの表記が法律で義務づけられています。副業でも例外ではありません。
最初の半年は我慢の期間です
開設したばかりのネットショップは、ほぼ売れません。認知度がゼロだから当然です。
自分のクライアントを見ていると、月に安定して売上が立つようになるまで3〜6ヶ月かかることが多いです。最初の1ヶ月は売上ゼロも珍しくありません。2ヶ月目で数千円。3ヶ月目でやっと1万円。こういうペースが現実的です。
ここで「やっぱりダメか」と諦める人が多いです。でも、ECは育てるものです。商品レビューが溜まり、リピーターがつき、検索順位が上がっていきます。このサイクルが回り始めるまでの我慢期間が、最初の半年です。半年間、売上がゼロでも作業を続けられるかどうか。ここが分かれ道です。
自分がEC支援の立場で思うこと
EC支援の仕事をしている中で感じるのは、「副業感覚」と「事業感覚」の違いです。
副業感覚だと「空いた時間にやる」「うまくいかなかったらやめればいい」。これだと大抵うまくいきません。事業感覚だと「毎週◯時間を確保する」「3ヶ月後にこの数字を達成する」。小さくても計画があります。
副業だからこそ、事業として取り組みます。この意識の差が、成功と失敗を分けると思っています。「副業だからゆるくやる」のではなく「副業だからこそ時間を効率的に使う」。限られた時間で最大の成果を出すために、計画を立てて優先順位をつけます。
まとめ
副業ECを始める前に知っておいてほしいことをまとめます。甘い情報に惑わされないこと。商品選びが最重要であること。プラットフォームは目的に合わせて選ぶこと。初期費用は最低5万円かかること。時間の使い方を工夫すること。確定申告を忘れないこと。最初の半年は我慢すること。
厳しいことを書きましたが、ECは正しくやれば副業として成り立つビジネスです。地味な作業の積み重ねが売上を作ります。情報商材のキラキラした話ではなく、地に足のついた取り組みを応援しています。
