社会不適合者がAIに助けてもらいながら会社を経営している話

正直に書きます。自分は仕事ができるタイプではありません。

2008年に起業して、もう18年目になります。18年も会社を続けていると聞くと、しっかりした経営者を想像する方がいるかもしれません。実態はまるで違います。

決断が遅いです。やるべきことを先送りしてしまいます。マルチタスクができません。完成したものを「もうちょっと直してから」と手元に留めてしまい、結局出すのが遅れる。メールの返信を3日放置してしまいます。5分で終わる連絡を、なぜか1週間かけられません。

サボっているわけではないのです。返信しなきゃと毎日思っています。思っているのに手が動きません。時間が経つほど「遅れてしまった申し訳なさ」が膨らんで、余計に手が止まります。この悪循環を18年間ずっと繰り返しています。

普通のことが、普通にできない

これは仕事に限った話ではありません。家族からのLINEでさえ、1〜2週間気づかないことがあります。「既読スルー」以前の問題で、そもそも開いていません。スマホの通知欄に何十という数字がついているのは見えます。開かなきゃと思います。でも開いた瞬間に今やっている作業が止まります。止まったら戻れなくなります。そのジレンマで、結局どちらも進みません。

仕事の相手を軽視しているわけでも、家族をないがしろにしているわけでもありません。全方位に対して同じことが起きています。家族との約束、子どもの学校の準備、仕事の納品、経理処理。全部が混ざって、どれから手をつければいいのかわからなくなります。

メモを取っていないから忘れるわけではありません。カレンダーにも、やることリストにも、ちゃんと書いてあります。書いてあるから見えます。見えるから、全部が同時に自分を追いかけてきます。バッチリ記録しているからこそ苦しい、という状態でした。

一般的に言うと、社会不適合者に近いと思います。普通の人が普通にできることが、自分にはできません。会社が成長するにつれて、苦手な部分がどんどん目立つようになってきました。抱えるタスクは増えるのに、自分のキャパは変わりません。頭ではわかっているのに、体が動きません。これは怠けではなく、ずっと自分を悩ませている問題です。

なぜAIを使い始めたか

格好いい理由ではありません。「このままだと回らない」と思ったからです。

1日あたり60件くらいのメッセージが届きます。Slack、メール、LINE、Messenger、Discord。チャネルがバラバラなのも問題ですが、それ以上に厄介なのは、そのほとんどが「読んで終わり」ではないことです。返信には判断が伴い、判断した結果として別の作業が発生します。見積もりを作る、資料を準備する、誰かに確認を取る。1つのメッセージの裏に、2つ3つのタスクがぶら下がっています。それが毎日60件。単純に積み上がっていきます。

厄介なのは、頭の中ではずっとそのタスクのことを考えていることです。忘れているなら楽です。でも忘れていません。「あれをやらなきゃ」と思いながら、別のことを考え始めてしまい、気づけば夜になっています。

ビジネス書やXで情報を集めると、書いてあることは同じです。「人に任せろ」「仕組み化しろ」「即レスできない人は信頼を失う」「返事をすぐ返さないのは相手を軽視しているということだ」。全部正しいと思います。ただ、心がけで直せるなら、もうとっくに直しています。18年間、何度も「明日からは即レスする」と決意して、何度も同じところに戻ってきました。意志の力では解決できないことがあります。少なくとも自分の場合は、そうでした。

だから心がけではなく「仕組み」で補うしかありません。意志の力で自分を変えるのは諦めました。

AIとの関わりは2017年ごろに遡ります。IBMのWatsonを使って、EC事業者の課題をナレッジベースにし、AIがコンサル情報を出力する仕組みを作ろうとしていました。当時はAIの精度が足りず、思い描いていたことの半分もできませんでした。でも根っこにあったのは同じです。判断が苦手な人間でも、仕組みの力で動けるようにならないか。限られた集中力で、できるだけ多くのアウトプットを出す方法はないか。

2022年ごろからは、社内用のAIツールを自分で開発し続けています。業務のあらゆる場面でAIを使えるようにする「AI Business OS」のようなものです。今ではChatGPTやClaudeが登場して、2017年にやりたかったことは全部できるようになりました。あの頃から探し続けていたからこそ、今のAIが出てきたときに「これだ」とわかりました。意志の力に頼らない方法を探した結果、ずっとAIにたどり着き続けていた、というのが正確な表現です。

AIで変わったこと

「最初の一歩」が出るようになった

これが一番大きい変化です。

メールの返信を書くとき、白紙の画面を見ていると手が止まります。何から書き始めればいいかわかりません。相手にどう伝えればいいか考えすぎて、1行目が書けません。でもAIに「こういう内容のメールが来たんだけど、返信案を出して」と頼むと、30秒でたたき台が出てきます。

そのたたき台を見ると、「ここは違うな」「この表現はもっとこう」と直すモードに入れます。ゼロから作るのは苦手でも、あるものを直すのは得意です。この性質にAIがぴったりハマりました。

メール1通あたりの時間は、20分から10分くらいになりました。でも本当に変わったのは時間ではなく、「着手できずに2日放置する」が減ったことです。たたき台があるだけで、「とりあえず手をつけよう」と思えます。この心理的なハードルの低下が、自分にとっては時間短縮より大きな効果でした。

考えすぎが少しマシになった

自分は情報に触れると全部考えてしまうタイプです。提案書を1つ書くにも、あらゆるパターンが頭に浮かんで決められません。「Aの方向もいいけどBも捨てがたい。でもCもありえる。そもそもDという選択肢も……」と頭の中でぐるぐる回ります。結果、何も書けないまま2時間が過ぎます。

AIに壁打ちすると、思考が外に出ます。頭の中でぐるぐる回っていたものが文字になると、急に整理がつきます。「あ、この方向でいいんだ」と決められるようになります。AIの回答が正しいかどうかは関係ありません。自分の思考を外に出すプロセスそのものに価値があります。

人に相談するのは気を使ってしまいます。「こんなことで悩んでいるのか」と思われるかもしれません。相手の時間を奪ってしまいます。AIなら、そういう遠慮がいりません。何度でも、どんなくだらないことでも投げられます。これが自分には合っていました。

得意なことに集中できるようになった

経営者は何でもやらなければいけないと思っていました。実際は、苦手なことを無理にやっているから全体のスピードが落ちていただけでした。

AIに定型的な作業を任せるようになって、本来得意なこと。クライアントの課題を整理して言語化すること、仕組みを考えること、人に教えること。そこに使える時間が増えました。月にすると20時間くらいの作業が減ったと思います。週あたり5時間。1日1時間。小さく見えるかもしれませんが、その1時間が「自分の得意なこと」に使える時間になったことで、仕事の質が変わりました。

変わらなかったこと

先送り癖は治らない

AIがたたき台を作ってくれても、「あとで確認しよう」と思ったまま3日経つことがあります。ツールの問題ではなく、自分の特性の問題です。

こんなブログを書いている暇があったら溜まってるメールに返信しろよ、と自分でも思います。でも不思議なことに、考えをまとめて言語化する作業はできます。目の前の連絡は出せないのに。この凸凹が自分でもよくわかりません。相手から見たら「やる気がないだけ」に見えると思います。でも、やる気がないのではなく、やりたいのにできません。この感覚を同じように感じている方がどれくらいいるのかわかりませんが、もしいるなら「自分だけじゃない」と思ってもらえたらと思います。

ここは仕組みで補うしかありません。リマインダーを設定します。締め切りを人に伝えてしまいます。「今日はこれだけやる」と決めて他を見ないようにします。AIは便利ですが、自分を動かしてくれるわけではありません。

判断の遅さは相変わらず

選択肢が増えるほど迷います。AIは選択肢を出すのが得意なので、むしろ迷う場面は増えたかもしれません。「3つの案を出して」と頼むと、本当に3つ出てきます。どれも良さそうに見えて、決められません。

最近は「1つだけ出して。一番おすすめのもの」と頼むようにしています。選択肢を減らすのも、AIの使い方のコツだと気づきました。決断が苦手な人間にとって、AIに「選んでもらう」使い方は意外と有効です。

使っているAIツールと費用

現時点で日常的に使っているのは2つです。

ChatGPT Plus(月額約3,000円)。リサーチ、メール返信のたたき台、画像生成、データ分析に使っています。Web検索機能が便利で、「この業界の最新動向を教えて」みたいな使い方もしています。

Claude Pro(月額約3,000円)。長文の分析、コーディング、提案書の構成に使っています。壁打ち相手としてはClaudeのほうが合っています。共感ではなく新しい視点をくれるバランスが、自分には心地いいです。

合計で月約6,000円。月6,000円で月20時間の作業が減り、着手のハードルが下がりました。時給換算すれば間違いなく黒字です。自分にとっては効率化ツールというよりも、「社会不適合者が社会に適合するための補助輪」です。大げさではなく、本当にそう思っています。

まとめ

AIは万能ではありません。自分の弱点が消えるわけでもありません。先送り癖は治らないし、判断は相変わらず遅いです。

でも、普通のことが普通にできない自分が、少しだけマシに仕事を回せるようになりました。18年かけてもできなかったことの一部が、AIのおかげでどうにかなり始めています。それだけで十分です。

このブログでは、そういう目線でAIの話を書いていきます。キラキラした活用術ではなく、社会不適合者寄りの人間がAIに助けてもらいながら、なんとかやっている話を。同じように悩んでいる方に、何かひとつでも届くものがあれば嬉しいです。

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