正直に書きます。自分はコードを書くのが遅いタイプです。
デザイナー出身で、必要に迫られてプログラミングを覚えた人間です。美大を出て、最初の仕事はWebデザインでした。Photoshopでカンプを作り、HTMLとCSSに落とし込む。それが2000年代前半の話です。そこからPHP、JavaScript、データベースと少しずつ領域を広げてきましたが、基礎をきちんと学んだわけではありません。独学と実務の積み重ねだけです。エンジニアとしての基礎体力が決定的に足りません。
だから、ちょっとした機能を追加するのにも時間がかかります。調べて、試して、エラーを直して、また調べて。Stack Overflowで解決策を見つけて、コピペして、動かなくて、別の解決策を探して。1つの機能に半日かかることもざらでした。プロのエンジニアなら1時間で終わる実装に、自分は4〜5時間かけていました。
Claude Codeを使い始めたきっかけ
2024年の後半、自社ツール(Sync8)の開発が行き詰まっていました。Sync8はHono + Cloudflare Workers上で動くAI Business OSで、React 19のフロントエンドとD1データベースで構成されています。機能は100を超え、テーブルは100以上、APIルートは120本以上。やりたいことはまだまだあるのに、自分の手が追いつきません。
外注も検討しました。ただ、外注のコミュニケーションコストは想像以上に高いです。仕様書を書いて、レビューして、質問に答えて、修正を依頼して。やりとりに1週間かかることもあります。しかもSync8は自社専用のツールなので、業務の文脈を理解していない外注先に伝えるのは特に難しいです。「ここはこう動いてほしい」「いや、そういう意味じゃなくて」の繰り返し。自分で書いたほうが早いです。でも自分で書くと遅い。この板挟みが半年以上続いていました。
そんなときにClaude Codeの存在を知りました。ターミナルから直接AIにコーディングを手伝ってもらえるツールです。プロジェクトのファイル構成を理解した上でコードを書いてくれます。最初は半信半疑でした。AIがコードを書くといっても、結局は自分で直さないといけないんだろうと。
試しに、ずっと後回しにしていた小さなAPI実装をClaude Codeに手伝ってもらいました。「ユーザーの設定情報を取得するAPIエンドポイントを作って。既存のauth middlewareを使って、D1データベースのsettingsテーブルからデータを取得する形で」と指示しました。自分なら4時間はかかる作業が、1時間半で終わりました。しかも、エラーハンドリング、バリデーション、型定義まで含めてです。出力されたコードを読んでみると、自分のプロジェクトの書き方のスタイルに合わせてくれていました。「これは使える」と直感しました。
開発時間がどう変わったか
結論から言うと、開発にかかる時間が体感で半分以下になりました。
以前は1つのAPIエンドポイントの実装に平均4〜5時間かかっていました。内訳はこうです。ルーティングの設定で30分。リクエストのバリデーションで30分。データベースクエリの組み立てで1時間。エラーハンドリングで30分。レスポンスの整形で30分。テストとデバッグで1〜2時間。1つひとつは難しくないけど、全部を組み合わせると時間がかかります。とくに「あれ、HonoのContextオブジェクトからD1にアクセスする書き方ってどうだっけ」と調べ直す時間が全体の30%くらいを占めていました。
Claude Codeを使い始めてからは、同じ作業が1〜2時間で終わるようになりました。調べる時間がほぼゼロになったからです。AIがプロジェクトの既存コードを見て、同じパターンで新しいコードを書いてくれます。自分はレビューと微調整だけでいいのです。
とくに効果が大きかった場面を4つ書きます。
新しいAPIエンドポイントの雛形作成。これまでは既存のコードをコピーして変数名を書き換えていましたが、Claude Codeに「こういうエンドポイントを作って」と伝えるだけで、プロジェクトの命名規則やエラーハンドリングパターンに合わせたコードが出てきます。
エラーハンドリングのパターン実装。正直、エラーハンドリングは後回しにしがちでした。面倒だからです。でもClaude Codeなら「このAPIに適切なエラーハンドリングを追加して」と言えば、400、401、404、500のケースを網羅した実装を提案してくれます。おかげで、エラーハンドリングの品質が上がりました。
データベースのマイグレーション作成。テーブルの追加やカラムの変更を行うSQLを、既存のスキーマを読み取った上で生成してくれます。手で書くとNOT NULL制約やデフォルト値やインデックスの設定を忘れがちですが、AIはそこを抜かしません。
テストコードの生成。テストを書くのは大事だとわかっていても、実装だけで疲れてしまってテストまで手が回りません。これが正直な実態でした。Claude Codeなら、実装コードを見せて「テストを書いて」と言えば、正常系と異常系を含めたテストが出てきます。テストのカバレッジが大幅に上がりました。
自分なりのワークフロー
最初の頃は丸投げしていました。「この機能を作って」と大まかに伝えて、出てきたコードをそのまま使う。でもこのやり方だと、意図と違う実装になっていることに後から気づいて、リファクタリングが必要になることが何度かありました。
試行錯誤の結果、今は5ステップのワークフローに落ち着いています。
ステップ1:自分で設計を考えます。紙に書くこともあります。何を作りたいか、データの流れはどうなるか、どのテーブルを使うか、UIはどういう動きをするか。ここだけは自分の頭で考えます。AIは「どう作るか」は教えてくれますが、「何を作るべきか」は教えてくれません。
ステップ2:Claude Codeに具体的な指示を出します。「こういう設計で、こういうAPIを作りたい。既存のsrc/routes/users.tsを参考にして、同じパターンで実装して」と、設計図を渡すイメージで指示します。「いい感じに作って」では精度が落ちます。
ステップ3:出力されたコードを読んで確認します。ここが一番大事です。AIが書いたコードを読んで理解できないなら、そもそもAIコーディングツールは使えません。「ここの条件分岐は意図通りか」「このクエリにN+1問題はないか」「セキュリティ的に問題はないか」。読んで、判断して、OKを出す能力が必要です。
ステップ4:修正が必要な部分だけ手で直します。全体をAIに書き直してもらうより、ピンポイントで自分が修正するほうが早い場面は多いです。変数名の変更や、条件の微調整はキーボードで直接直します。
ステップ5:テストを書いてもらって動作確認します。テストが通れば完了です。通らなければ、エラーメッセージをClaude Codeに渡して修正案をもらいます。
うまくいかなかった場面
万能ではないので、うまくいかなかった場面も正直に書きます。
既存コードの大規模リファクタリング。ファイル間の依存関係が複雑な場合、AIの提案がズレることがあります。「ここを変えるとあっちに影響する」という関連性は、プロジェクト全体を俯瞰する必要があります。これはまだ人間が考えるべき領域です。
セキュリティに関わる部分。認証フロー、トークンの管理、データの暗号化。ミスが許されない実装は、AIの出力をそのまま使うのは怖いです。必ず自分で確認しています。「動くコード」と「安全なコード」は別です。
ビジネスロジックの設計。料金計算のルール、ステータス遷移の条件、権限管理のロジック。業務固有のルールは、自分の頭で考えるしかありません。
開発が遅い人にこそ向いている
プログラミングが速い人にとって、AIのコード生成はそこまで大きな差にならないかもしれません。でも、自分のように「調べる時間」が全体の半分以上を占めていた人間にとっては、その調べる時間がほぼゼロになるインパクトは計り知れません。
Sync8の開発でいうと、Claude Codeを導入してからの3ヶ月で、それ以前の半年分くらいの機能を実装できました。新しいAPIを20本以上、管理画面のページを10ページ以上、ワークフローエンジンの改修、ブログウィザード機能の追加。以前の自分なら到底追いつかないペースです。
まとめ
Claude Codeは魔法の杖ではありません。何を作りたいか、どう設計するかは自分の頭で考える必要があります。出力されたコードを読んでレビューする能力も必要です。でも、手を動かす部分を大幅に加速してくれるツールとしては、自分にとって欠かせない存在になりました。
開発が遅くて悩んでいる人、とくに自分のようにプログラミングが本業ではないけど開発もやらなきゃいけない人には、小さなタスクから試してほしいです。既存のプロジェクトで「後回しにしている小さな改善」があるなら、それをClaude Codeに手伝ってもらってください。きっと「こんなに楽になるのか」と驚くはずです。
