AIに仕事を頼むほど、見えない固定費が増えます。読み込ませたスキル、長すぎる指示、コマンド出力。どれも少量なら気になりませんが、毎回の会話に重なると、本題に使える文脈を静かに削っていきます。
Claude Code v2.1.261では、この詰まりを調べるための/skill-doctorが追加されました。読み込まれたスキルのうち、実際には使われていないものと、消費しているコンテキスト量を確認できます。派手な新機能ではありません。ただ、社内でAIを常用するなら、こういう点検機能のほうが長く効きます。
今回の更新で変わったこと
Anthropicの公式リリースによると、v2.1.261には次の3点が入っています。
/skill-doctorで、未使用スキルとコンテキスト負荷を確認できるbashOutputMaxCharsとtaskOutputMaxCharsで、コマンドやバックグラウンドタスクの出力をインラインで受け取る上限を、最大128K文字まで調整できる--append-subagent-system-prompt-fileで、長いサブエージェント向け指示をファイルから追加できる
このほか、組織ポリシーを読み込めなかった理由を/statusとclaude doctorに表示する改善や、危険なrm -rfの検知強化も含まれます。今回の記事では、日々の運用に直結するコンテキスト管理に絞ります。
スキルは「多いほど安心」ではない
スキルは、AIに業務手順や判断基準を渡すための部品です。請求書処理、顧客返信、調査、WordPress公開など、仕事ごとに手順を分けられます。
問題は、使わないスキルまで常時読み込ませる運用です。指示の量が増えるほど、AIは本題以外のルールも抱えます。結果として、回答が遅くなる、別業務のルールが混ざる、必要な会話履歴が圧迫される、といった不具合が起きやすくなります。
/skill-doctorは、感覚で整理していた作業を点検可能にします。私は「使っていないから削除」ではなく、まず常時ロードから外し、必要なときだけ呼ぶ形に変えるのが安全だと見ています。業務手順そのものを消す必要はありません。
最初に決めるのは、文字数ではなく出力の扱い
出力上限を128K文字まで上げられるようになっても、常に最大にするのは雑です。大量ログをそのまま会話へ流すと、重要なエラー行が埋もれます。
社内運用では、出力を3段階に分けると扱いやすくなります。
- 会話には結論、失敗理由、次の操作だけを返す
- 詳細ログはファイルへ保存し、保存先を返す
- 調査が必要なときだけ、該当範囲を追加で読む
bashOutputMaxCharsとtaskOutputMaxCharsは、2番と3番の境界を調整する設定です。長い出力を受け取れることと、長い出力を毎回読ませることは別です。
長い指示はファイルを正本にする
--append-subagent-system-prompt-fileは、サブエージェントへの長い指示をコマンドラインへ直接詰め込まず、ファイルから渡すための機能です。
実務では、ここに最新版の業務ルールを置きます。たとえば「一次情報を優先する」「金額を確定しない」「公開前に重複を調べる」といった共通条件です。チャットのたびに手で貼るより、更新箇所が一つになります。
ただし、ファイル化だけでは管理になりません。正本の保存先、更新担当、適用する仕事、変更履歴まで決めて初めて使えます。古い指示ファイルを複数残すと、AIはどれを信じるべきか分からなくなります。
小さな会社での導入手順
初日は設定変更より棚卸しです。代表的な仕事を3つ実行し、それぞれの終了後に/skill-doctorを確認します。毎回使われるスキル、特定業務だけで使うスキル、一度も使われないスキルに分けます。
次に、特定業務だけで使うものを常時ロードから外します。コマンド出力は初期値のまま始め、必要な情報がファイルへ逃げて確認しづらい仕事だけ上限を上げます。変更前後で見る数字は、応答時間、やり直し回数、1セッションのコンテキスト使用量です。
注意点もあります。公式リリースは未使用スキルとコンテキスト負荷を表示すると説明していますが、それだけでスキルの業務価値までは判定できません。月に一度しか使わない決算手順や事故対応手順は、利用頻度が低くても残す価値があります。削る判断は人が持つべきです。
まず1週間、記録してから減らす
今日やることは一つです。よく使う3業務で/skill-doctorの結果を保存し、1週間後に見直します。未使用だから即削除ではなく、「常時必要か」「呼び出し時だけでよいか」「保管だけでよいか」を分ける。AIの性能を上げる前に、余計な荷物を降ろす作業です。
一次情報
この記事は2026年9月5日に公式リリースと公式ドキュメントを確認して作成しました。機能説明と運用上の提案を分けて記載しています。

