AIアシスタントのカスタム指示を公開する

ChatGPTにもClaudeにも、事前に「自分はこういう人間で、こういう返答をしてほしい」と設定できる機能があります。カスタム指示(Custom Instructions)やシステムプロンプトと呼ばれるものです。この設定を入れるだけで、AIの回答の質がまるで変わります。

自分が実際に使っている設定を公開します。なぜ公開するかというと、「カスタム指示って何を書けばいいの?」という質問をよくもらうからです。具体例がないとイメージしにくいです。自分の設定をそのまま真似する必要はありませんが、参考にしてもらえればうれしいです。

カスタム指示とは何か

カスタム指示は、AIとの会話の前提条件を設定する機能です。毎回「私はEC支援会社の経営者で……」と説明しなくても、事前に登録しておけばAIが文脈を理解した状態で回答してくれます。

ChatGPTでは「カスタム指示」、Claudeでは「プロジェクト」や「スタイル設定」という機能で同じようなことができます。GoogleのGeminiにも類似機能があります。呼び方は違いますが、やっていることは同じです。「AIに自分のことを事前に教えておく」ということです。

設定しないとどうなるかというと、AIは毎回まっさらな状態で回答します。丁寧だけど的外れ、一般的だけど自分の状況には合わない。そういう回答が返ってきます。例えば「マーケティングの施策を提案して」と聞くと、大企業向けの数千万円規模のキャンペーン案が返ってくることがあります。自分のような5人以下の会社には使えない提案です。カスタム指示を入れるだけで、この問題がかなり解決します。

自分がChatGPTに入れている設定

ChatGPTの「カスタム指示」には2つの欄があります。「自分についての情報」と「回答の仕方」です。それぞれに入れている内容を書きます。

自分についての情報

「私はEC支援・BPO事業を運営する会社の経営者です。スタッフは2〜5人。AIツールを自社業務に活用しています。自社でAI統合型の業務ツールも開発しています。福岡県在住、在宅ワーク中心。デザイナー出身でフルスタック開発もやっています。」

ポイントは、仕事の内容、会社の規模、技術的なバックグラウンドを入れることです。これだけで、AIが「大企業向け」の回答ではなく「少人数の会社向け」の回答を返してくれるようになります。「スタッフ2〜5人」と書くだけで、提案される施策の規模感が自分に合ったものになります。これは地味だけど効果が大きいです。

回答の仕方

「回答は日本語で、簡潔にお願いします。前置きは不要。結論を先に。箇条書きを多用してください。専門用語は使ってOK。コードを書くときはTypeScriptを優先。」

これを入れておかないと、毎回「もちろんです!お手伝いします。まず前提として〜」という長い前置きから始まります。正直、時間の無駄です。「結論を先に」「前置き不要」の2つを入れるだけで、回答の実用性が段違いに上がります。1日に何十回もAIを使う自分にとって、毎回の前置きが省略されるのは大きな時間節約になります。

Claudeに入れている設定

Claudeのプロジェクト機能を使っています。こちらはもう少し詳しく書いています。

「Sync8代表。EC支援、BPO、AI教育が事業領域。自社ツール(Hono + Cloudflare Workers + React)を開発中。レスポンスは簡潔に。曖昧な質問には確認を返してほしい。コードはTypeScript、Tailwind CSS。実装例はコピペで動くレベルで。」

Claudeは長文の指示をよく理解してくれるので、ChatGPTより詳しめに書いています。特に「曖昧な質問には確認を返してほしい」というのが重要で、これを入れておくと、AIが勝手に推測して的外れな回答をするのを防げます。普通、AIは何かしら回答を返そうとします。でも、質問が曖昧な場合は「こういう意味ですか?」と確認してくれたほうが、結果的に良い回答が得られます。

プロジェクトごとに異なる設定も入れています。開発プロジェクトなら「このリポジトリの構成は〜」「使っているライブラリは〜」、ライティングなら「文体は〜、ターゲットは〜」という具合です。コンテキストが明確なほど、AIの回答精度が上がります。

最近はClaudeの「スタイル設定」も使い始めました。フォーマル、カジュアル、テクニカルなど、会話のトーンを指定できる機能です。開発の相談はテクニカルに、ブログの下書きはカジュアルに。用途によってスタイルを切り替えています。

カスタム指示を書くときの5つのコツ

1. 自分の立場と状況を明確にする

「経営者」「フリーランス」「会社員」。立場が変わると最適な回答も変わります。「スタッフ2〜5人の会社」と書くだけで、「100人規模の組織向けの回答」が出なくなります。業種、担当業務、経験年数なども書いておくと効果的です。

2. 出力形式を指定する

「箇条書きで」「テーブル形式で」「コード付きで」。形式を指定しておくと、毎回「箇条書きにして」と追加指示する手間が省けます。自分の場合、箇条書きと結論先出しが基本です。長文の説明は求めていないので、「200文字以内」のように文字数の上限を入れることもあります。

3. 不要なものを明示する

「前置き不要」「お世辞は要らない」「注意書きは最小限に」「免責事項は不要」。AIは丁寧であろうとするあまり、余計な文章を付け足す傾向があります。「〇〇という点にご注意ください」「これはあくまで一般的な情報であり〜」。こういった付け足しが、回答の50%を占めることもあります。不要なものを明示することで、必要な情報だけが返ってきます。

4. 技術スタックを書いておく

開発者なら特に重要です。使っている言語、フレームワーク、ツールを書いておきます。「TypeScript + React + Tailwind」と書いておけば、Pythonのコードが出てくることはありません。「Cloudflare Workers」と書いておけば、AWSの例ではなくCloudflareの例で回答してくれます。これだけで回答の実用性が劇的に上がります。

5. 定期的に見直す

カスタム指示は一度書いたら終わりではありません。仕事の内容が変わったり、AIの使い方が変わったりしたら更新します。自分は月に1回くらい見直しています。「最近、こういう回答が多いけど、もっとこうしてほしい」と感じたら、その場で修正します。使い始めた当初の設定と今の設定は、かなり違います。使い込むほどに、自分に最適な指示が見えてきます。

カスタム指示の効果:ビフォー・アフター

カスタム指示を入れる前と後で、何が変わったか。具体的に書きます。

指示出しの手間が減りました

一番大きい変化です。以前は毎回「日本語で」「簡潔に」「コードはTypeScriptで」「前置き不要」と書いていました。これが全部不要になりました。1回あたり30秒の節約。1日10回AIを使うとして、1日5分。月に2時間以上の節約になります。年間にすると24時間以上。丸1日分の作業時間です。

回答の精度が上がりました

自分の仕事の前提を理解した状態で回答してくれるので、的外れな回答が減りました。体感で、「使える回答」の割合が6割から8割くらいに上がりました。的外れな回答が返ってきて再質問する手間を考えると、この改善は大きいです。

AIとの会話がスムーズになりました

前提の説明が不要なので、いきなり本題に入れます。これは思った以上にストレスが減ります。人間との会話でも、文脈を共有している相手との会話は楽です。AIも同じです。「いつものように」「前回の続きで」といった感覚で使えます。

AIの「人格」が安定しました

カスタム指示を入れると、AIの回答のトーンや深さが安定します。毎回違う人と話しているような感覚がなくなり、「いつもの相棒」と話している感覚になります。これは心理的に意外と大きいです。信頼できる相手との会話のほうが、良いアウトプットが出ます。

よくある質問

「どのくらいの長さが最適?」

ChatGPTのカスタム指示は各欄1500文字までです。自分は各欄200〜300文字くらい使っています。短すぎると効果が薄いですし、長すぎるとAIが要点を見失います。200〜500文字が目安です。大事なのは長さではなく、具体性です。

「仕事用とプライベート用で分けたほうがいい?」

分けたほうがいいです。ChatGPTは設定を切り替えられますし、Claudeはプロジェクトごとに設定できます。仕事用は「簡潔に、専門用語OK」、プライベート用は「わかりやすく、例え話を交えて」という使い分けをしています。子どもの学習サポートに使うときは「小学生にもわかるように」と設定することもあります。

「設定しても効果を感じない」

指示が抽象的すぎる可能性があります。「いい感じに回答して」ではなく「結論を先に、箇条書きで、200文字以内で」のように具体的に書きます。具体的であればあるほど効果が出ます。「プロフェッショナルな回答を」よりも「です・ます調で、箇条書き中心で、1回答300文字以内で」のほうが確実に効きます。

「カスタム指示に個人情報を入れても大丈夫?」

名前や会社名を入れることに抵抗がある人もいるでしょう。ChatGPTの場合、カスタム指示の内容はAIの学習には使われないと明記されています(オプトアウト設定の確認は推奨します)。自分は会社名と職種を入れていますが、住所や電話番号は入れていません。入れる情報の範囲は、自分のリスク許容度で判断すればいいでしょう。

まとめ

カスタム指示は、AIを自分専用のアシスタントに変える最初の一歩です。設定にかかる時間は5〜10分。それだけで、毎日のAI利用が格段に快適になります。

自分の設定をそのまま真似する必要はありません。大事なのは「自分の仕事の前提をAIに伝える」「出力の形式を指定する」「不要なものを明示する」の3点です。この3つを押さえれば、カスタム指示の効果を実感できるはずです。まだ設定していない人は、今日やってみてください。5分で終わります。その5分の投資が、今後のAI利用の質を根本的に変えてくれます。

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